アドラー心理学は、オーストリアの精神科医であるアルフレッド・アドラーが、フロイトとの決別後に独自に発展させた心理学のことです。
個人心理学(Individual Psychology)というのが正式名称です。人間というものは分割できない存在=個人(Individual)なのだという意味の名称なのですが、日本語にしてしまうと、別の意味にとらえられがちなので、創始者の名前をとってアドラー心理学と呼ばれることが多いようです。アドラー本人は個人心理学と呼んでいました。
そして、アドラー心理学は、日本では知る人の少ない心理学です。日本では、現在 個人心理学(アドラー心理学)の統一された学会 社会的に認知された学会が存在しません。(2010年9月現在)
※「日本アドラー心理学学会」という名称の団体がありますが、ここは日本でいう所の学会ではありません。
しかし、チーフカウンセラー本郷をはじめ、代表の内田、その他のカウンセラーも、非常に魅力を感じている理論・思想体系です。
その考え方や技法が非常に援助に強力なために 熊本こころ相談室では中心的な心理学理論として使っています。
欧米にあるアドラー心理学関係の多量の文献や書籍がたくさん翻訳されて、日本に紹介されることで、20年後くらいにはなんとか社会的に認知された個人心理学の学会が成立するかもしれません。
アドラー心理学では
○人間(個人)を分割できない全体としてとらえ、意識や無意識の葛藤は表面上のものに過ぎない、実はアクセルやブレーキとして働いているだけで、全体としては統一されていると考えます。(全体論)
○人間は目的的な存在であって、人間の行動の目的を探ることによってその人間を理解できると考えます。(目的論)
○人間は純粋客観的な事実を知ること不可能であり、自己のユニークな認知システムを通した主観的認知しか知り得ない。だから、その人間の主観的認知がどのようなものであるかを知ることが重要だと考えます。(現象学=認知論)
○人間は社会的な存在であって、個人と周囲の人間の関係にこそ「心の問題」は存在すると考えます。(対人関係論)
アドラー心理学は、思想と理論と援助技法のミックスされたものであるかもしれません。
たとえば、
○人間には「共同体感覚」という、周囲の人や社会と協力していこうという感覚のコアがあり、それを発達させて周囲と協力して、貢献感を感じていくことで 人間はより幸福に生きていくことができる。
○共同体感覚を発達させて、「自分が好きで」「他人も信頼できて」「社会に貢献できる」ようになると人は幸せになれる。
という基本的なコンセプトがありますが、これは科学と言うよりも、哲学、思想と言った方がよいかもしれません。
クライエントを援助するときには
○基本的に 現在のクライエントの方法とは違う代替案(バイパス)の提案をします。
※これを、アドラーは「患者の目の前のスープにつばを吐く。」と表現しました。
つまり、今の不幸に至る行動パターンとは違った 幸せにいたる行動パターンをするように援助するわけです。
これが、アドラー心理学は指示的なカウンセリングと呼ばれる所以ですが、
もちろん、他派と同じく、代替案を受け入れてもらうために
○ラポールを築いたり
○カウンセリングの目標を一致させたり
○話し合っている問題が誰の問題であるのかをはっきりさせたり(問題の分離、課題の分離)
と様々な手段を講じます。さらには問題の解決に様々な技法を援用します。
「現代アドラー心理学」には、「現代のアドレリアンは、様々な他派の技法も使う。」と書いてありますから、忌諱される技法はほとんどありません。
アドラー心理学はその思想(共同体感覚の希求)と理論(全体論・目的論)に特徴があり、技法の限定はしていないのです。
☆アドラー心理学は決してフロイトの精神分析学の亜流ではありません。(「無意識の発見」でもエレン・ベルガーがそのように解説しています。)
アドラーがフロイトの作った精神分析学会の会長であったことは事実ですが、アドラーはフロイトに対抗して理論的にはフロイトのほとんど正反対を主張しました。
アドラー心理学はフロイト精神分析の亜流どころか フロイト精神分析のアンティテーゼなのです。
個人心理学(アドラー心理学)は ネオフロイト学派や家族療法、第三潮流の先駆け的な心理学理論であり、それを超えるメタ心理学であるかもしれません。
最近の北米アドラー心理学会の会誌を読むと、スピリチュアルタスクについて盛んな論がされています。アドラー心理学は人間のスピリチュアルな側面も包含する心理学への変貌しつつあります。
熊本こころ相談室の使っているアドラー心理学は
熊本こころ相談室のスーパーバイザーである ジョセフ・ペルグリーノ博士(北米、モントリオール個人心理学研究所理事長)のアドラー心理学を踏襲しています。
ペルグリーノ博士は、1936年にイタリアのローマに生まれ、14歳の時家族とともにカナダのモントリオールに移住してきました。
ペルグリーノ博士はロジャーズの心理学からカウンセリングを学び始め、行動療法、ユング心理学なども幅広く学び、最後にアドラー心理学と出会います。1970年に、米国のニューヨーク州立大学で教育学部門の修士号を取得します。この時に、理論面を整備したハインツ・アンスバッハーとアドラーの長男のクルト・アドラー(ニューヨーク学派)に師事します。
1984年に当時のシカゴ・アルフレッド・アドラー研究所(現在のシカゴ・アドラー心理学大学院、 TheAdlerSchoolofProfessionalPsychologyChicago)で修士号を取得します。この時にはドライカースの弟子のハロルド・モサックたち(シカゴ学派)に学びます。
さらには1986年に米国のコロンビア大学でアドラー派のカウンセリング・心理療法で博士号(心理学部門の学術博士)を取得しました。そしてこの時には古典派(シカゴ学派を「あれはドライカース心理学だ。アドラーに戻れ!」と批判する派)の雄ソフィア・デ・ヴリースに師事したのです。
そのため、ペルグリーノ博士ご本人は、誰か一人の教えを金科玉条守り続けるような排他的色彩のない立場の「統合されたアドラー派」を自称しています。
(アドラー心理学の先生たちの中では、アドラーの長男のクルト・アドラーが一番好きだそうです。アドラーから直々に育てられたクルトの人間味がいかにすばらしいものだったかが分かりますね。クルト・アドラーから「あなたは、私の父によく似ている。」と言われたという話は有名です。)
熊本こころ相談室では、2007年7月21日、22日にジョセフ・ペルグリーノ博士を熊本にお呼びして、ワークショップ「アドラー派のカウンセリング」を開催しました。(ヒューマンギルド共催)
熊本の多くの心理学・メンタルヘルスの専門家も参加して、そのカウンセリングの技と博士の人格に感銘を受けた方が続出しました。
熊本こころ相談室のチーフカウンセラー本郷ひろなかは、このワークショップで、ファシリテーターをつとめました。
博士は、本郷ひろなかのことを「私の友人にして、弟子であるヒロよ。」と親しく呼んでくださいます。
本郷ひろなかの使うアドラー心理学カウンセリング・セラピーは博士の直伝です。